小話少々 とれろ・かもみろ新八編 忍者ブログ
腐向です。 閲覧注意! 銀新・新八受け
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『とれろ・かもみろ』
の新八サイドです。





お昼過ぎの万事屋は静かだ。
昼食を食べ終えた神楽ちゃんは定春と遊びに行ったし、銀さんはソファで転寝。
遠くから聞こえるかぶき町の喧騒と、銀さんの微かな寝息は音として、というよりも静寂として僕の耳に入る。
万事屋への依頼もなくて、差し当たり金銭面以外での心配事もなくて、ひたすらに穏やかな午後だ。平和だ、と思う。
出来ることならば僕も銀さんの隣で惰眠を貪り、のどかな平穏を満喫したい。

でも僕にはまだやることが残っていた。
食後の後片付け、万事屋の清掃、洗濯物を取り込んで、畳んで……まるで家政夫だ。
銀さんや神楽ちゃんは「雑用係」なんて言うし、自分でも不本意ながらそう感じる。
万事屋の家事は別に僕の仕事というわけではない。強要されているわけでもない。
それでも既に習慣のようになってしまった雑用を終えなければ、何だか腰が落ち着かないのだ。
横になって昼寝をしようとしても、流し台の食器が、部屋の隅の埃が、ベランダの洗濯物が気になって、眠気はいつまで経っても訪れない。

結局僕はいつものように食器を洗い、和室の掃除をする。
居間は銀さんが眠っているから後にしよう。あの安穏とした寝顔が目に入ると掃除に集中できない。
心地よさ気な空気がじわじわ伝わってきて僕の中で蔓延する。するとたまらなく楽しくなってしまってはしゃぎ回りたいような、にやにやしながらずっと銀さんの寝顔を眺めて居たいような浮かれた気分になってしまうから。
つまるところ銀さんの寛いでいる姿を横目に家事をこなすところからが、僕の穏やかな午後なんだろう。
彼の表情は、直接、僕の心に働きかける。

「ごろごろしてないで働け天パ。」
少し悔しくなって、聞こえはしないだろうけどつい悪態をついてしまった。

きっとこの人は無理矢理たたき起こされて家事の手伝いを所望されたら、ぶつぶつ文句を零しながらもなんだかんだで手伝ってくれる。
僕が洗った食器の水気を拭って食器棚に戻してくれるだろうし、手が届かない箪笥の上の埃も掃ってくれるだろう。取り込んだ洗濯物を一緒に畳んでくれるかもしれない。
三日に一回くらいは。


「あ、すんません。綿埃かと思ったら銀さんの髪の毛でした。白くてふわふわしてるから間違えちゃいました。」
「人のコンプレックス抉んのがそんなに楽しいかこのやろー。お前だってどうせ何十年もしたら全部真っ白になるか抜け落ちるかどっちかなんだよ。」
「僕たち年とらないらしいですよ。銀さんの髪はずっとふわふわのままですよ、良かったですね。」
「……例え年をとっても俺の頑固な毛根は死に絶えねー。」


他愛ないやり取りのテンポのまま、一人でするよりも幾分早く一日の家事を終える。
でも掃除機のプラグを掃除機本体に収納するボタンを押すのは僕の仕事だ。
きゅるきゅると掃除機本体に吸い込まれていくプラグを二人で眺めるのは、きっと楽しい。

それでも僕は目覚める気配のない銀さんにほっとしながら、彼の午睡を守るためにそっと毛布をかけた。
まだ起きてもらっては困るのだ。もう少しだけ深く、眠っていて欲しい。
あからさまに気を遣うのは恥ずかしいから、あくまでさりげなく、足音を忍ばせる。
漏れる鼻歌もできるだけ音量を抑えた。これがなかなか難しい。


粗方の家事が終わるとやっと僕は銀さんを起こしにかかる。この頃には彼の眠りは熟睡に片足をかけた中途半端な、でも一番心地よい塩梅になっているだろう。その時間を一瞬だけ邪魔してしまうことに微塵も罪悪感は湧かない。
だって僕はこの瞬間のためだけに黙々と家事をこなしているのだから。

「もぉ!だらだらしてないでちょっとは手伝ってくださいよっ!」

大声で文句を並べ立てても銀さんの意識はまだ朦朧としたまま。
今日もタイミングはばっちりだった。

「あんたの家なのにいつも僕が片付けてるじゃないですか。」
心地よい眠りの余韻に浸っているのだろう。
この世の甘味をすべて食べつくしたような表情を浮かべた銀さんが、僕に手を伸ばしてくる。
彼のこんな顔はこの瞬間しか見ることができない。本当に幸せそうな顔をするのだ、この人は。
僕はお通ちゃんのライブに出かける時だって、こんな表情作り出せない。

自分がこの人にとって一番上等な存在になれたような錯覚を起こす。
銀さんの満ち足りた表情を築いた原因の一端を僕が担えているとしたら……。
―すごく、嬉しい。


一度おぼろげに覚醒した銀さんは、再び睡魔に捕らわれる前に両腕にぎゅっと力を込めて僕を拘束する。
目の前にある銀さんの胸に顔を埋めて、肺一杯に空気を吸い込むとやけに甘ったるい匂いがして、包まれた瞬間に眠気が兆してくるのを感じた。

僕は忙しい。今日の夕食の当番は神楽ちゃんだけど、大部分は僕が手伝うことになるんだろうし、確か冷蔵庫は殆ど空っぽだったから買出しに行かなければならない。

だから目が覚めたら、今度こそ銀さんに手伝いを頼むのだ。
スーパーまで原付きを出してもらって、一緒に食材を吟味する。買い物籠にいつの間にか潜んでるお菓子はどうしようか。財布にはどれくらいお金が入ってたっけ……。今月は水道代払わなきゃいけないから節約しときたいな。夕食の献立は何にしよう。商店街の道すがらにある梅の木はもう満開かなぁ……。


四散していく思考を纏めるのを諦めて、僕らは短い午睡を堪能した。






この歌が頭から離れない。





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