小話少々 とれろ・かもみろ 忍者ブログ
腐向です。 閲覧注意! 銀新・新八受け
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「もぉ!だらだらしてないでちょっとは手伝ってくださいよっ!」
右手に箒を持ち、左手は腰にあてて新八が怒ったような声で不満を浴びせてきた。どうやら掃除が終わったようだ。

「あんたの家なのにいつも僕が片付けてるじゃないですか。」
新八はぶつぶつと小言を漏らす。そのタイミングはいつもずれている。
毎度、粗方の家事が済んでから文句を言うのだ。

掃除を始める前、もしくは掃除中に手伝えと言われたら俺は新八が掃除機をかけやすいように炬燵をどかしたり、テレビ裏の絡まったコンセントを解いて纏めたり、箪笥の上の埃を掃ったりするはずだ。
面倒くさくて毎日は無理だろうけど。

「高いところ無理して手ぇ伸ばすなー。どうせ届かないだろ、高身長ナイスガイ銀さんにまかせときなさいそういう所は。」
「いい気になってられんのも今のうちですよ、銀さん。僕だってあと二・三年も経てばあんたなんかすぐ追い越しちゃいますからね。」
「残念でしたー。俺たち年なんてとらねーだろ。お前はずっと新八のまんまなんですー。」
「……例え年をとっても新八のまんまなんスけど。」

それでもあいつとくだらない掛け合いをしながら部屋を片付けるのはきっと楽しい。


だから俺は、新八が家事をしている間ずっとあいつの目に留まるように狸寝入りを決め込んでいる。
すると新八はちらりと俺を一瞥して、小声で「ごろごろしてないで働け天パ」と漏らす。一度だけしか言わない。

もう少し大声で呼びかけてくれないだろうか。小声でも、何度か繰り返して言ってくれないだろうか。
そうじゃないと俺は今まで寝たふりをしていたことが露見するのがなんだか気恥ずかしくて、素直に起き上がることが出来ない。
起き出すための新八の次の言葉を待っていると、「……まったく、しょうがないなぁ。」なんてやっぱりしのび声で言いながら横になっている俺のためにふわりと毛布をかけてくれるのだ。
目は瞑っているからその姿を見ることは出来ないが、柔らかに微笑んでいるんだろう。その表情が見たくて薄目を開けようとして、やっぱり断念する。
がたごとと控えめに聞こえる物音と更に控えめに聞こえる下手糞な旋律を追いかけて、閉じた瞼の奥で今新八が何をしているか、どこにいるのか想像しながら貪る狸寝入りは心地良すぎるからだ。
時折感じる視線はやけに暖かい気がして、もっとずっと俺のこと見ててくれないかなとか無茶な願いを真剣に祈る。
叶える為の画策は未だ思いつかない。


それに、新八も本心では俺が目覚めることを望んでいない。
どんなに俺が寝汚なくても、あいつが本気で俺を起こしにかかったら三秒で飛び起きる自信がある。容赦をなくした新八の恐ろしさは志村家の血筋なのだろう。彼の姉である妙の、菩薩のような笑顔が頭を過ぎった。
小声で、一度しか言わない小言。
微かな物音は極力抑えられたもので、俺が眠り込んでいるのを邪魔しないように気遣っているようだ。ここで起きたら男じゃない。


空寝がとろりとしたまどろみに変わり、やがて熟睡に移行する瞬間を見計らったように新八はやっと大声で文句を並べ立て始める。瞼を開くと大抵は目の前で、使い終わった掃除用具か既に畳まれた洗濯物を手に持った新八が居て咎めるような態を装っている。眼鏡のレンズ越しの瞳は穏やかで、本当は怒っていないのがバレバレだ。

朦朧とした意識のまま俺は至高の寝具を手に入れたような気持ちになって新八に手を伸ばした。

新八は忙しい。この後夕食の支度をしなければならないし、そのためには買出しにも行く必要があるだろう。
それでも大人しく俺の腕に収まるこいつはきっとこの瞬間のために黙々と家事をこなしているんだろうな、なんて思い上がってもいいんだろうか。

加速する睡魔に身を委ねながら、新八を俺の中に沁みこませるように両腕に力を込めた。




新八サイド 『とれろ・かもみろ新八編』

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