土→新
「土方さんって、 歩くの遅いんですね。」
半歩先を歩いていた新八が振り向いて言った。
マヨネーズ補充のため立ち寄ったスーパーで偶然出くわした。
軽い挨拶を交わし背を向ける間際、 新八の腕に痛々しく食い込んだ荷物が目に付いてしまった。
見兼ねて奪ったビニール袋。 結構な重量だ。 「ついでだ、 万事屋まで送ってやるよ。」
「なんか、 いつもきびきびしてる印象があったんで意外です。」
「……あぁ、 一応巡回も兼ねてるからな。 周囲に目ェ向けとかねーといけねーんだ。」
答える土方の右手には火のついた煙草。 左手には先刻しきりに遠慮する新八から奪った、 万事屋の晩飯になる予定の食材。
発育途中の幼さ。 それ故の柔らかみを残した着物の袖から覗く腕。 そこに未だ残る赤い筋が気に喰わない。 ……そっとマヨネーズを忍ばせた。
視線の先は注視すべき江戸の町並みなんかではなく、 半歩先の眼鏡。
「やっぱり『鬼の副長』の二つ名は伊達じゃないんですね! その仕事熱心さ、 銀さんにも見習わせたいっスよ…… 」
俺の嘘っぱちの返答にも尊敬の色を浮かべた、 レンズの向こう側の一対の瞳。
この目にその姿を焼き付けるために、 俺はゆっくりと足を運んだ。
PR
この記事にコメントする
最新記事
(01/03)
(02/26)
(02/22)
(02/20)
(02/12)
手ブロ
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター