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腐向です。 閲覧注意! 銀新・新八受け
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万事屋未来超捏造注意!
神楽不在→帰省話




就寝前の語らい。 ぽつり、 ぽつり言葉を空気中に逃す。 淹れ立ての茶がぬるまるほどの短い時間の、 言わば決まり事。
息を吸っては吐き出す行為を呼吸と呼ぶように、 当たり前の習慣となっていた。

銀時と新八は向かい合うことなく、 肩を並べて一つのソファに腰掛ける。
正面にある無人のソファはかつて巨大犬と怪力少女が独占していたもの。 最近はたまに来る依頼人専用になってしまった。
ぷかりと空いた空間を埋めることができない。 だから、 がらんどうに二人で対峙する。



「いよいよ明日ですね。」
新八は、 口から零れた己の声が思いのほか弾んで聞こえることに気がついた。
誤魔化すように、 茶を啜る。 緩んだ口元が湯飲みで隠れる。

明日、 宇宙を股にかけて活躍するエイリアンハンターが帰ってくる。

「あー、 米大量に仕入れとかなきゃな。」
いつも通り、 気だるい銀時の声。
微塵も感情を表に出さない態度に、 それでも新八は 「あぁ、 やっぱりこの人もはしゃいでるんだ」 と感じ取り、 くすりと笑う。

神楽がエイリアンハンターの父と共に宇宙へ旅立ってから一年。
三人と一匹で成り立っていた万事屋に、 二人きりで過ごすようになってから一年。

ニュースで知る彼女の活躍が誇らしく、 それと同等の寂しさを共有した。
頻繁に届く便りを大切に仕舞い込んだ引き出しは、 一人の力では開けることができない。


「あ……、 ドッグフードも買っとかなきゃいけませんね」
先程よりは落ち着いた声になるように意識した。

本当は米だってドッグフードだって先日まとめて買っておいた。
一週間前に届いた手紙、 帰省の知らせに目を通したその日のうちに 「直前になって慌てるといけませんから」 と買い込んだたくさんの食料。 その存在を忘れたわけではない。 銀時だって覚えているはずだ。 原付きで何往復もスーパーと万事屋を行ったり来たりしたのだから。

ただ、 あまりに浮き立つ己の感情を隠しておきたかった。
隣から伝わる空気は翌日への期待がだだ漏れで、 どんなに表情を取り繕っても、 落ち着いた声で話しても、 きっと意味はない。
それでも無言でいるわけにはいかなかった。 二人の間に漂う静寂は濃密過ぎて、 一息で肺が破裂してしまう。
そして無邪気に喜びを共有するのはあまりに照れくさいから。
無意味なやりとりは緩和剤。
秘めることで、 じわりと沁み込む互いの感情を噛み締めた。 静かに、 穏やかに。

神楽と定春のいない万事屋で身についた習慣。
どう足掻いても伝わってしまう感情を紛らわせるように、 なだめるように交わす会話。 
向かい合うより近い距離で感じる体温は、 触れ合うよりも労りが籠る。

寄り添い合って過ごした時間は、 一つの帰結を迎えていた。








「ただいまアルっ!」 「わんっ」
相変わらず暴力的とも言える力強さで、 玄関の戸を開ける少女の第一声に顔がほころんだ。

「おかえりなさい、 神楽ちゃん、 定春。」
「おー、 おけーり。」

ばたばた落ち着かない足音。
舞い上がる埃。
占領されるソファ。
きっともうすぐ階下の大家が怒鳴り込んでくる。 「うっせーんだよガキどもがァ!!」

刹那に変化した空気はあまりにも懐かしいものだった。
まるで一年の空白などなかったかのように自然に出た 「ただいま」 と 「おかえり」 が嬉しくてたまらない。


おい神楽ァ、 土産はねーのか、 宇宙饅頭とか。
後から宅配で届くアル。 饅頭はないけどナ。
何だよ気が利かねーな、 土産っつったら饅頭だろ……。
良かったですね銀さん。 饅頭だったらあんた一口も食べれませんよ。
銀ちゃんついに糖尿になったアルか?
まだ予備軍ですぅ~。
同じようなもんでしょ。

戻ってきた三人と一匹の日常は、 一見して以前とまったく変わらない。 騒々しいほど賑やかで、 無秩序な優しさに満ちている。

それでも様変わりしたものはあったようで、 神楽は銀時と新八を交互に眺めてはにやりと笑った。

「? どうしたの神楽ちゃん。」
「何だお前ェ。 人の顔見て笑んじゃねーよ。」
不思議そうに聞いてくる二人がおかしくて、 にやつきは一層深まる。

―自分たちでは気付いてないアルか……
ふー、 やれやれ。 なんて芝居がかった溜息を聞こえるように吐いてやる。 半ば呆れるような気持ちで、 彼らの疑問に答えてやった。




「お前らすっかり老夫婦アルな。」

きょとんとした顔で言葉の意味を考える二人に、 今度は声を上げて笑った。

一年前から変化することなく二人の間を漂う空気は、 より濃密さを増したようだ。
肌に突き刺さる深い、 甘さ。  しかし他者を排除する雰囲気は微塵も感じられない。 
寧ろ包み込まれるような柔らかさ、 成熟した穏やかさ。 ひたすらに、 暖かい。
幸福に擽られる。

以前確かに存在した、 銀時と新八の互いに向かう剥き出しの愛情は、 磨かれて丸みを帯びた。
磨り減ったのではない。 積み重ねるように感情を上乗せして、 丁寧に擦りこまれて老成した。
その中におそらく多量に溶け込んでいるだろう自分へ向けられた慈愛を思い、 これの形成に加担した共犯者としての誇りが湧き上がる。



―何て愛しいパピーとマミーなんだろう!







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