小話少々 イボの話 忍者ブログ
腐向です。 閲覧注意! 銀新・新八受け
[57] [56] [55] [54] [53] [52] [51] [50] [49] [48] [47]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



イボ編で神新
というか神→新



仕事仲間、 家族、 兄妹、 親子……。

普段から女ッ気のない新八の、 アネゴを除いて一番近しい異性。
それが嬉しくもあったし、 誇らしかった。
いつからか芽生えていた、 自分でも可愛らしく思えるほど清冽な愛情。
大切に仕舞い込んでたまに取り出しては眺めていた。

日々肥大化することで抑圧された心が窮屈だと叫ぶ。
私はそっと、 新八に甘える。 ぐるぐる渦巻いていた淀みがすっと体に沁みこんで新鮮な心が生まれる。
それをずっと、 繰り返している。
多分、 私の中で一番上質な心。 新八が与えてくれたものだから、 ただ大切だった。
これまで築いてきた間柄を破砕してまで新しい関係を望むほど欲張りにはなれない。
私は充分に満たされていた。
きっと私と新八の間に流れる空気はいつまでも変化することはない。 ずっとこのまま。
そう思い込むことで安心できたし、 それ以上を望む心には蓋をした。
守らなければならないのはこの大切なつながり。 ……本当は臆病なだけなのかもしれないけど。



イボに寄生された二年後の世界。

成長した私の姿に戸惑う新八がひどく遠くに感じられた。
「神楽ちゃん」
いつも私を優しく呼んでくれる声が好きだった。 あんなに音痴なくせに、 どうしてこんなに耳ざわりの良い音を作り出せるのか不思議だ。 何度もその声が発せられる口元を観察し、 その声を生み出す喉の外側、 首筋に触れた。 何の特徴もない唇が喋るごとに開閉して、 私より少し太い首の真正面にある小さな喉仏が上下する。 それだけだった。
「神楽さん」
そう呼ばれた瞬間、 イボに侵食されて朦朧とした意識の中で心臓が軋む音を聞いた。
伸びきったカセットテープ、 埃まみれのスピーカー、 「神楽さん」。 
二年の間に開いた距離は、 あの暖かな響きさえ奪ってしまったのだろうか。

私と新八は、 仕事仲間で、 家族で、 兄妹で、 親子。 変わらないと信じていた関係。
それが少し身体が成長しただけでこんなにも脆く崩れ去った。
私は子供でいるべきだったのだ。 身体も、 心も。

幸せだったはずなのに、 心の奥底では望んでいた「もっと」。
手を繋ぐときには、 指を絡めあうような甘さを。 後ろから飛びつくように甘えるのではなく、 正面から優しく抱き合える関係を。
望むあまりに、 私は失ってしまったのだろうか。
体の内側から這い上がってくる悪寒にぞっとする。 心臓はこれまでにないほど強く鼓動を刻むのに、 血の気が引いていくのを感じた。

万事屋を飛び出した新八を引き止めることさえできなかった。


ヤムチャヅラした銀ちゃんの視線を感じる。
私の打ち砕かれた望みはばらばらになって零れ落ち、 辺りを漂っている。
見透かされてしまうから、 目を合わすことが出来ない。

この欲望が露見したら、 本当に何もかもを失ってしまう。

「追いかけねーの?」
面倒くさそうに投げかけられた銀ちゃんの言葉。 きっと髪の毛を掻き毟りながら、 呆れたような顔をしてる。
玄関に立ち竦んだまま耳を傾ける。 指一本動かしたくない気分だった。
だんまりを決め込んだ私に溜息を一つ。

「あー……、 アイツ女に免疫無いだけだから、 そんだけだ。 大丈夫だろ」
近づいてくる声に動揺する。 思いを仕舞い込むには時間が足りない。
来るな、 近寄るな、 頼むから今だけは。
この男は聡いから、 一欠片の破片からすべて読み取ってしまう。

「まー良かったんじゃねーの?




……お前やっと、 本当ようやく、 新八に女扱いされたわけだし? やったじゃん」

反射的に顔を上げてしまった。
目の前にはにやにや顔。 銀ちゃんが人をおちょくる時にする笑い方だ。

どういうことだ。こいつの口ぶりではまるで、 私が新八のこと好きみたいじゃないか。 新八に子ども扱いされるのが不満だったみたいじゃないか。
勘付いていたのか? まさか。 そんなはずはない。 
ずっと押し込めてきたんだ。
一滴たりとも漏らさないように、 厳重に。 鍵を閉めて。

呆然とする私に、 不愉快な笑みは更に深くなる。
にやにやにやにやにやにやイラつく。

「どういう意味アルか。 別にあんな眼鏡に女扱いされたくもないネ。」
できるだけ冷たく言い放つ。 瞳に軽蔑の色を浮かべるのも忘れない。

「あァ? 何? 今更誤魔化す気かよ。」
「何を誤魔化さなきゃいけないネ。 誤解招くような言い方すんなヨ。」

「あー、 悪ィ悪ィ、 気付かれてねーと思ってたのか。
っていうかガキの癖にいっちょまえに銀さんに隠し事できてるつもりだった?」

からかうような声音に嘘はない。 私を茶化すためだけに発せられる響き。 それ以外の感情は読み取れない。

頭が混乱する。 気付いていたのなら、 どうして驚きや同情、 不安や反感が見当たらないのだろう。
私は、 新八に恋してるんだぞ?
ばれたらきっと、 今までの関係ではいられなくなる。
この男に恐怖心は無いのか? 私たちの大切な万事屋を、 私がぶっ壊してしまうかもしれないのに。
私の心は脅威なのに。


「いや~、 良かったな神楽ァ。 アイツめちゃくちゃ動揺してたぞ。
脈ありってことじゃね?」
心底楽しそうな厭らしい顔。 恋する乙女に向けるべき表情ではない。

それでも確かに祝福されている気持ちになるなんて、 私はどうかしてるのだろうか。

冷えた身体に温度が戻ってくる。 むしろ熱い。
熱の集まった顔を見られたくなくて、 銀ちゃんの顔面に拳をぶちこんだ。


万事屋を飛び出して新八を探す。
知らぬ間に感づかれていた気持ちを、 銀ちゃんが当たり前に受け入れていた事実が嬉しい。
むかつくけど。

私が抑えこんでいたものは、 誰かに肯定された思いだったのだ。

湧き上がってくる気力はまるで闘魂のように勇ましい。
二年前の体にはなかった武器もある。 対新八用大人の兵器。
神楽様の豊満なセクシーボディにうろたえるだろう新八に、 付け込む言葉を考えているさなか。

なぜか気に喰わない黒服を着た、 それでも見間違えるはずのない黒髪と眼鏡を視界の隅に捉えた。
大人の女らしく淑やかな振る舞いで、 さり気なく腕を組んで胸を押し付けてやろうか。
そして潤んだ瞳でじっと見つめて、 甘ったるい声で名前を囁くのだ。 思いっきり恋慕を込めて。 


彼の反応を想像するとどうしようもなく気持ちが浮き立って、 いつものように飛びついた。






PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧可能にする    
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
手ブロ
ブログ内検索
何かあったらこちらへ
バーコード
アクセス解析
カウンター
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) 小話少々 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]